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虎白

鮎往復還

PICKUP / 特集「鮎」JAPANESEARCHIVE

鮎往復還

毎年変わる旬のおいしさ

虎白では、同じ料理がメニューに挙がることはほとんどない。「夏になれば、鱧の湯引き梅肉添えに鮎の炭火焼き、じゅんさいの酢の物」といった日本料理店のいわば「王道」を行かず、毎年違う形で旬の味わいを提供したい。それが小泉瑚佑慈氏の考えだ。「日本料理の伝統的スタイルに立ちながらもとらわれず、食材そのものの持つおいしさと、それを引き出す調理法、食材などの組み合わせを突き詰め、今までにないおいしさを表現する」のがポリシーである。

「もちろん、鮎の炭火焼きも鮎ご飯もおいしい。僕も大好きです。ただ、常にもっと違った表現方法がある、おいしい食べ方はまだまだ無限にあると考え、それを形にしています。といっても鮎という素材の持ち味からズレては意味がない。あくまでも日本料理の枠におさまることを大切にしています。例えば、鮎を背開きにして、焼いた身とカリカリに揚げた骨を散らした鮎ご飯や、春巻きにした年もあります。僕自身、1年経てば去年より1年分多くの経験を積んでますから、もっとおいしいものが作れて当然ですよね。だから、同じものにならないのは自然の流れ。そうやって挑戦を続けることが料理人としての面白さであり、それが同時にお客さまの感動につながると信じています。でも、リクエストがあれば炭火焼きも出しますよ。全然イヤじゃない。お客さまに喜んでいただくのが第一です」

鮎の新しい味わい

さて、今回の2品の一つは「かき揚げ」だ。普通は背越しにして刺し身で食べるが、「揚げたらおいしくなるかな」と発想した。

 

「衣を使わず、小麦粉をまぶしてカリッと揚げ、小笹でいぶして香りをつけます。ワタは取って別に焼き、出汁と醤油で少しのばしてソースにします。ソースで肝の苦みを味わいながらパリパリと。ちょっと違った食感を楽しんでいただけます」

 

八角と乾燥させたとろろ昆布の入った塩をつけてかじると、実に小気味のいい音。口中に「これぞ鮎!」の苦みと香りが広がる。肝を別に焼いてソースとして味わうのもオツなもの。確かに炭火焼きにはない、鮎の新しい味わいの発見に感動するはずだ。

虎白ならではの料理

2品目は「揚げ鮎の焼きトウモロコシ寄せ」。背越しにした鮎に薄く小麦粉をつけて揚げ、細かく砕く。その一部と、出汁醤油を塗って炭火でこんがり焼いたトウモロコシ、ゼラチンを溶かした牛乳をミキサーにかける。そのまま冷蔵庫に入れ、自然な柔らかさに固める。それに土佐酢のゼリーに柚をかけ、揚げ鮎を散らす。これも「虎白」でしか味わえない鮎料理である。

 

「トウモロコシのほうには、リーキ(ポロネギ)を炒めて香りを出し、牛乳でペースト状にしたものもほんの少量入っています。鮎をカリカリにして砕くことはあまりないんですが、他の小魚とは全く違うワタの旨み、独特の食感と香りが出ます。特に鮎の季節も後半に入ると、炭焼きやご飯とは違った形で鮎料理を楽しみたくなるんじゃないかなと思って、考えた料理です」

 

トウモロコシの甘みと鮎の苦みがやさしく溶け合い、ゼリーの酸味に残暑の涼風のようなさわやかさを感じる。柔らかな食感とカリカリした鮎の歯触りがまた心地良い。

努力の賜物

「僕は料理人になるまで、食べたことのないものだらけ。鮎もそうでした。4年前くらいから本格的に勉強をしようと、京都に行ったり、築地に入る天然の鮎を1カ月間毎日食べ続けたり。とにかく鮎を知らないと、形だけ変えたところでおいしい料理はできないと、いっぱい食べました。それで分かったのは、鮎は奥が深いなということ。時期や川によって味が全然違うんですよね。天然に関しては本当に振れ幅が大きい。難しいけど、天然の鮎を本当にいい状態でコンスタントに使いたいですね」

 

そんな小泉氏は「おいしい鮎情報」をキャッチしては食べに出かける勉強を今も続けている。鮎だけではない。料理全般そうだし、美術展に出かけるなど、「本物に触れる時間」を作ることに努めている。「料理人として、普遍的な人間の感性、感覚を磨いていかなくてはいけない」と思うからだ。虎白の今までにない料理はその努力の賜物なのである。

 

 

小泉 瑚佑慈(こいずみ・こうじ)

1979年生まれ、神奈川県出身。『ミシュランガイド東京』で三つ星の「石かわ」の石川秀樹氏に師事。2008年に「石かわ」の移転に伴って「石かわ」創業の地にオープンした「虎白」の料理長に28歳で就任した。『ミシュランガイド東京2016』で二つ星から三つ星に昇格し、国内最年少の“三つ星料理人”となった。以来、三つ星を保持し続ける。

虎白

東京都新宿区神楽坂3–4
TEL03–5225–0173

http://kagurazaka-kohaku.jp

営業時間 17:30~22:30(L.O.)
定休日  日曜・祝日
アクセス 東京メトロ有楽町線・南北線飯田橋駅より徒歩3分
席数   24席(カウンター6席、テーブル18席)

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