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元麻布 かんだ

初めに「鮎」有りき(後編)

PICKUP / 特集「鮎」JAPANESEARCHIVE

焼き方で変わるおいしさ

ただ生の状態で見ても、味までは分からないらしい。「あんまり細いと脂がないなとか、肥えていればおいしそうだなとか、体形からイメージされる範囲に限られる」という。「その鮎のおいしさは、焼いて初めて評価できる」ものなのだ。そして大事なのは「焼き方」。神田氏によれば「鮎焼きは料理人にとって、『炭扱いの試金石』と言える」技術だそう。

「まず口から串を刺して、背骨を縫うように躍り串を打ちます。それに満遍なく塩を振って、炭で焼きます。ガスの火だと、頭やヒレがうまくカリカリに焼けたとしても、中の背骨が炭で焼くようには焼けない。だから炭でなくてはいけないし、うまく火を通すためにはその炭も、手前の頭の下辺りにだけ並べる必要があります。頭を少し下にして、尻尾の方は、炭から少し遠ざかるように串を斜めにして焼くんです。こうしてしばらく焼くと、鮎の口やエラの辺りから水分がどんどん出てきます。鮎はうろこごと焼くので、水分の出る場所がここしかないんですね。だから焼けて出てくる水分が落ちやすいように、口の方を少し下にするわけです。で、水分が出て炭の上に落ちると、ジューッと音がして白い湯気が上がります。やがてジューッがジュッに変わって、炭から黒い煙が出てきます。これは脂が出てきた証拠。そうなったら今度は、この脂をなるべく落とさないように串を水平にして、頭と腹を中心に脂を回して、香ばしく焼きます。脂を焦がすようにジワッとね」

日本料理の真骨頂

つまり鮎は、自分から出た脂で独自の風味と旨みを作り出す。だからこそ「2匹と同じ鮎はない」。またシンプルな料理法だけに、最も料理人の技術が問われる焼き物でもある。「鮎が気に入ったら、そこを自分の店にするのもいい」と神田は言う。鮎の塩焼きは、鮎自身の個性と料理人の技術、考え方が楽しめる「日本料理の真骨頂」なのである。

 

 

神田裕行(かんだ・ひろゆき)

1963年生まれ、徳島県出身。大阪「喜川昇六」で日本料理の世界に入り、パリの日本料理店で5年間料理長を務めた。帰国後は徳島の料亭「青柳」に勤めながら平成調理師専門学校の講師を兼任。2004年に元麻布「かんだ」を独立開業。07年に『ミシュランガイド』が日本に上陸してから連続して三つ星を獲得している。

 

元麻布 かんだ

東京都港区元麻布3–6–34 カーム元麻布 1F
TEL03–5786–0150
http://nihonryori-kanda.com
営業時間 18:00~22:00(L.O.)
定休日  日曜・祝日
アクセス 東京メトロ日比谷線・都営大江戸線六本木駅より徒歩8分
席数   16席(カウンター8席、個室8人まで1室)

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