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マサズキッチン

クールで熱い皿

PICKUP / 特集「鮎」CHINESEARCHIVE

クールで熱い皿

 

中華の王道が作る鮎料理は?

鯰江真仁氏は積極的に「異質」を取り入れながらも、「これぞ中華」の王道を行く料理人である。基本は全て頭に入っていて、レシピはほとんど持たず、使う食材や気候、客の様子などを見て、その日のベストなさじ加減を加える料理スタイルを貫いている。鮎という初夏を象徴する食材に対して、どんな料理を発想したのか、興味深いところだ。

「いやぁ、鮎はやっぱり塩焼きがおいしい。僕も鮎は大好きで、この季節になるといっぱい食べます。日本料理の店に通っては、一度に軽く5、6匹の塩焼きを平らげてます。そもそも僕は出身が岐阜県だから、周囲は川だらけ。長良川を始め和良川、飛騨川、根尾川……どの川にも鮎がいて、解禁日になると『待ってました』とばかりに大勢の釣り人が集まってくるんですよ。中でもおいしいのは、馬瀬川の鮎かな。おいしい良い鮎って、上流に行かないといないんですよね。もちろん地元の人も普通に鮎釣りを楽しんでます。僕も子どもの頃はよく親に連れて行かれたし、川の瀬に木を打ち並べて取る簗やななんかもやったなぁ。あと、キャンプでは必ずみんなで鮎を釣って、河原で串を刺して塩焼きにしてかぶりついてましたよ。それから家では、8月を過ぎたら、卵を持った落ち鮎を甘露煮にしたりね。そういう記憶が強烈だから、なおさらその鮎を中華に仕立てるとなると、難しいと身構えてしまう。中華に限らず、和食以外の料理人はみんな、一度は鮎に触りたがるんだけど、結局は『塩焼きが一番だね』ってなっちゃうよね」

 

そう言いながらも鯰江氏は今回、「冷菜にしようかな。肝のソースをかけようかな」などといろいろ考えた末に、「中華の王道を行こう」と決めた。そうして出来上がった特別料理が、いわゆる「豆板魚」、辛いソースでの魚の煮込みである。

絶妙なハーモニーを味わう

「鮎は天竜川で取れた18㎝くらいの、やや大ぶりのもの。臭みのないいい香りで、何かおいしいんですよ。価格もリーズナブルだし。その鮎をまず開き、5%の塩水に10分くらい漬けます。それを天日で半日ほど干す。それによって皮も身も味が凝縮されて、旨味が出てきます。これは煮込みにするときの鉄則です。強いソースによく合うんですよね。あとは粉をまぶして、油を入れながら時間をかけてゆっくり焼いていきます。そうすると、骨まで食べられるから。話はちょっとそれますが、中華のこの煮込み料理は、落ち鮎でも悪くないですよ。実は以前、1時間くらいかけて焼いてみたんです。それはそれでおいしかった。ただどうしても身がパサパサして、味はもう鮎っぽくなくなってましたけどね。で、鮎だけだと味気ないので、同じ夏の味わいとして相性のいいナス、中でも、肉質が密で煮炊きしても形崩れしない賀茂ナスにしました。ナスは多めの油で揚げ焼きみたいにして、鮎を上に載っけて。そこに四川風の辛いソースをかけて、煮込んでいます。このソースが一番中華っぽいところかな」

 

見た目も味わいも、まさに中華! 鮎のしっかりした味わいと、賀茂ナスの風味、四川風ソースのピリ辛味、香菜の香りが絶妙のハーモニーを奏でる一品である。

触りたくなる魚

こと鮎に関しては、客から「中華で食べたい」というリクエストはないとか。それでも鯰江氏は鮎料理への挑戦をやめないだろう。鮎という魚は「塩焼きが一番」だと分かっていても、触りたくなる魚なのだ。

料理人プロフィール:

 

 

鯰江真仁(なまずえ・まさひと)

1967年生まれ、岐阜県出身。高校卒業後、岐阜や名古屋の中国料理店での修業を経て、96年に東京・神泉「文琳」へ。「文琳」では12年間働き、うち3年間は料理長を務める。2008年に恵比寿に「マサズキッチン」を開業。中国料理には厳しめと言われる『ミシュランガイド東京』で2009年に初めて星を獲得。

マサズキッチン

東京都渋谷区恵比寿1-21-13 BPRレジデンス恵比寿B1
TEL03-3473-0729

https://www.masas-kitchen.com

営業時間 11:30~14:00(L.O.)

     18:00~21:30(L.O.)

定休日  月曜

アクセス JR、東京メトロ日比谷線恵比寿駅より徒歩5分

席数   40席(個室あり)

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