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舞扇

足立尚隆

CHEF / JAPANESE

旦那衆に育てられた味

祇園らしい華やかさと遊び心あふれる料理を惜しみなく振る舞う料理人。京都の旦那衆に育てられ、磨かれた味を、次世代に伝えている。

足立尚隆(あだち・ひさたか)


1966年京都府生まれ。幼少期から料理に興味を持ち、自然な流れで日本料理の道へ。京都の割烹店などで修業し、97年に「舞扇」をオープン。2018年には店内をリニューアルした。

京都らしいサービス精神あふれる料理

祇園四条・新橋通の路地裏に、料理人や卸売人など、プロが通う店がある。主は、京都生まれ、京都育ちの料理人、足立尚隆氏。京都人による、京都人のための料理屋として、22年間、この地に根を下ろしてきた。

 

幼い頃は、料理上手な祖母がストーブで炊く黒豆が好きだった。小学6年生のとき、タイムカプセルの中には、「料理人になりたい」という夢を書いて入れたという。西陣「天㐂」や割烹などで修業しながら、中央市場のアルバイトで魚の目利きを習得して、31歳で独立、「舞扇」を開店した。

 

「それからは、お客様に育てられましたね。昔の京都には、料理にも伝統文化にも詳しい、粋な旦那方がたくさんいました。海老の身をお出ししたら“脚はどうした”と聞かれ、“捨てました”と言うと、“あほか!”と叱られて。それからは、身をお造りにして、頭を焼いて、脚を唐揚げにして。最後まで食べ尽くしましたね、昔の方は。お造りでも、井戸水で研ぐと包丁の金臭さが消えるとお客様に教わり、ずっと実践しています」

 

今では、指摘してくる客はいなくなった。それなら今度は「次の世代のお客様に料理で伝えていきたい」と語る。「外国のお客様にも喜んでいただきたくて、2階にゲストハウスを造りました」と、新たな試みにも積極的だ。「京都のモノづくりは、真面目で新しいもの好き。基本は確実に大事にする」と足立氏。

 

そんな京都らしいサービス精神あふれる料理が味わえる店だ。

店を始めてから毎年漬けているからすみ

「今年もからすみを漬けました。店を始めて以来、もう20年以上、この時期の恒例行事ですね」という足立氏。からすみは、まず血管をマチ針でつついて血抜きして1週間くらい塩に漬け、1日塩抜きをしたら、1週間、日本酒に漬ける。それから日中に店の屋上で天日干しにして、夜に冷蔵庫で保管するのを3、4週間。この工程を1シーズンに2回繰り返して、1年分のからすみを作る。「きちんと天日干しにしないと、おいしくないので、屋上があるという立地に助けられていますね。ちょっとあぶって、お酒のつまみとしてお出ししています」と話す。

 

「若い頃、魚の目利きを覚えるために、京都の中央市場でアルバイトをしていたことがあるんです。夜は割烹で修業して、朝は市場でアルバイト生活を3、4年続けました。ラクではありませんでしたが、魚は覚えられましたし、当時の市場の仲間たちが今は社長になっているので、魚介はいいものを仕入れさせてもらっています」

祝いの席を彩る華やかな器

「お祝いごとなどでいらっしゃるお客様も多いので、器はそれにふさわしいものをそろえるようにしています。やはり京都なので、京焼が多いですね。おちょこや蓋つきの徳利は、永樂善五郎さんの作品。蓋があるので、開けたときに酒の香りが楽しめますよ。永樂さんの干支のおちょこも集めました。お正月のお祝いで、お客様に年男がいたらそれでお出しするのですが、もう作られていないので貴重です」

 

ベネチアグラスは、2018年に店の改装のため休業し、2カ月間ヨーロッパを回ったときベネチアで買ったもの。ガラスに斜めのラインが入っていて、飲み物を入れると透明になるのが面白い。よくできているし、華やかなので300個も購入したという。

野菜は京野菜が一番!

野菜はほとんど京野菜を使っている。聖護院かぶに海老芋、小かぶもその一つ。「京都は、土と水が野菜作りに適しているのだと思います。それに、農家の方がものすごく丁寧に、手間暇かけて育てています」という。以前足立氏が畑を訪ね、花のついているきゅうりやなすびをわけてほしいとお願いしたとき、「小さいままじゃ出せないから、ちゃんとおいしくなるまで待ってほしい」と言われた。「それだけ誇りを持っているのですね。代々農家をやっていて、その家の自慢の野菜作りの方法を守っている生産者さんも、減ってはいますがいらっしゃいますよ」と話す。

 

「水はとても清らかな軟水です。京都の街には白山や比叡山などの水がすべて集まってくるので、地下には琵琶湖と同じくらいの水がめがあると言われています。店でも井戸水を使っています。京都の野菜で、京都で日本料理を作るには、京都の水が最も合うのです」

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