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銀座ふじやま

藤山 貴朗

CHEF / JAPANESE

京都「和久傳」の元総料理長が満を持して「銀座ふじやま」を

 

時にはシンプルに、時には豪快にと、食材へのアプローチを変える。

熟練の料理人ならではの洗練された技が光る。

藤山 貴朗(ふじやま・たかお)


1973年京都府生まれ。18歳で割烹での料理修業をはじめ、24歳で「和久傳」へ。「室町和久傳」「高台寺和久傳」料理長、和久傳総料理長を務めた。20193月、45歳で独立し、「銀座ふじやま」を開店。オープンから1年を待たずミシュラン一つ星を獲得。

京都から東京へ

京都の料亭「高台寺和久傳」で総料理長を務め、45歳で独立。東京・銀座の中心地に自らの店を開業した藤山貴朗氏。伝統の高みを極め、新たな挑戦を始めた料理人は今、次なる目標を定めていた。オープンから1年を待たず『ミシュランガイド東京 2020』で一つ星を獲得した、冬の「銀座ふじやま」を訪れた。

緩急の付いた料理で京都料理の神髄を魅せる

濃厚な白子のスープに豆腐を浮かべた、滋味深い椀。「お椀で奇をてらうことはしません。お椀を飲んで季節を感じ、ほっとしてもらうのが、日本の文化だと思います」と藤山貴朗氏は言う。 丁寧に作り込まれた八寸を堪能した後は、1.4㎏の堂々たる間人(たいざ)ガニの登場である。しゃぶしゃぶ用の透き通った身と、焼き蟹用の鮮やかな脚や蟹味噌は、息をのむ豪勢さ。

「京都の間人港で、その日、最初の競りにかけられる一番蟹を入手しています。夕方には発送してもらい、翌日の午前に着きますから、新鮮ですよ」

 

食材を生かし、シンプルに。繊細な料理もあれば、この蟹のように豪快な料理もある、緩急のある献立が、長年勤めた京都の料亭「和久傳」(わくでん)らしさであり、自身に根づくものだという。

「和久傳は特殊な店で、主は料理をしない女将(おかみ)です。だから料理に関しては、女将に意見を聞くことはあっても、基本的に料理長に任されています。料理人はおのおの、先輩に教わったり、自分で考えたりして、和久傳らしさを身につけます。だから、人が育つのです」

女将の体当たりの教えが私の財産

京都生まれ、京都育ち。18歳から板前割烹で働きはじめ、24歳で和久傳から声がかかった時は、「独立する前に2、3年、京都で最高の料亭を経験するのも悪くはない」というつもりだった。それが、27歳から室町和久傳の料理長を5年、32歳から高台寺和久傳の料理長を5年務め、総料理長となってから10年。20年以上を和久傳で過ごした。 「料理もおもてなしも、僕が経験したものとはレベルが違い過ぎてショックを受けました。

 

若い頃から料理長を任せてもらい、たくさん恥もかきましたね。生意気だった自分に対して、女将が毎日、料理の出し方、言葉遣い、玄関の空気感まで、料亭のもてなしや文化を体当たりで教えてくださったことが財産になっています」 独立の場に東京を選んだのは、本当の挑戦がしたかったから。 「これからは、東日本の食材も使っていきたいですね。そのためには産地を巡り、新たに人脈を築かなくてはいけません。それが今後の目標ですね」

京都の本物を銀座に

「東京に店を出すにあたり、京都の本物の数寄屋造りの店を銀座の真ん中に出現させたいと思いました。それで、新築のビルへの入店でしたが、内装は京都の数寄屋大工さんにお願いしたのです。ただ、伝統の数寄屋造りに、現代のものや、自分の好きなものを取り入れたいと思いました。古材も使っていますが、「西洋の材を使って数寄屋を造る」というのがコンセプトです。床柱は、知り合いで漆の木を自分で育てている塗師(ぬし)さんのお宅にお邪魔した時、漆を取り切って役目を終えた木が庭に置いてあったのを譲ってもらって、数寄屋大工さんに頼んでほぼそのまま床柱にしてもらいました。

 

稲穂の飾りは、店でお出ししている丹後の米を使った僕の手作りです。カウンターはレッドウッド(杉)を使用し、木目が浮き出る浮造(うづくり)にしてもらいました。石にもこだわっていて、カウンター室に置いているのは丹後の石で、床の間の柱の下の石は、貴船のものです。神社の橋に使われていた栗の古材をベンチにしたり、神主さんの笏(しゃく)の材料であるイチイを使ったりもしています。全体としては、洋木の持つざんぐりとした、独特の雰囲気があると思っています。料理とともに空間も楽しんでいただけたら、うれしいですね」

旬の京食材を直送

「間人(たいざ)ガニを含め、食材は今のところ京都を中心に西日本のものを使っています。和久傳にいた時からの生産者さんや仲買さんとのお付き合いがあり、今は物流もいいので、京都にいた頃とまったく変わらないくらい、東京でも食材を集めることができています。蟹を仕入れるにもやはり人脈は必要です。

 

ズワイガニは、間人か、間人がなければ同じ漁場の津居山や浜坂などを使うのですが、その中で最も大きく、形のいい蟹を仕入れています。京都ではコッペと呼ぶ雌(セコや香箱とも)は、浜で釜茹(ゆ)でしたものを送ってもらいます。茹でる人によって味が変わるので、特定の仲買さんにお願いして、その方に茹でて直送してもらっています」

特注の炭焼きで調理

「冬の味覚の代表である蟹は、さまざまな調理法で丸ごと味わっていただいています。生の脚の身を、出汁にくぐらせてさっぱりと。焼き蟹は特注の炭焼きを使って、香ばしく焼き上げます。蟹味噌も焼くことで濃厚な香りが楽しめますよ。蟹味噌は最後まで堪能していただくために、蟹の身との蟹味噌あえに、高麗人参(こうらいにんじん)を添えたものもお出ししています。ときどき高麗人参をかじりながら食べていただくという趣向です。

 

しゃぶしゃぶの後は、出汁を使って、ほっき貝や九条ねぎを加えた蟹のスープも味わっていただき、締めに親子丼の鶏肉を蟹に替えたような蟹玉丼か蟹雑炊を選んでいただけます。少しずつ両方作ってよ、という方もいらっしゃいますよ」

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