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武蔵 by アマン

武蔵 弘幸

CHEF / JAPANESE

コハダこそ究極の江戸前鮨です

江戸前鮨の世界を追求し、徹底的に細やかな仕事を貫く。そんな仕事ぶりが厚い信頼を集める名職人

武蔵 弘幸(むさし・ひろゆき)


1967年山梨県生まれ。18歳で父親の営む鮨屋に入り、切り盛りする。37歳で東京に出て、青山に「鮨武蔵」を開業。洗練された江戸前鮨で知られる。2018年10月、アマン東京の鮨店「武蔵 byアマン」の親方となる。ミシュラン二つ星の常。

 

一握入魂

かつて山梨で名声を築き、東京に打って出て成功したうえで、変化の中に飛び込んだ武蔵氏。長年暖簾を掲げた青山の店を閉め、アマン東京の鮨店の開店に親方として参画。次は、新しい舞台「武蔵byアマン」でさらなる高みを目指す。

 

18歳で山梨県にある実家の鮨屋に入り、16年。その山梨の店を閉め、東京・青山に店を構えて12年。そして今年、新たな挑戦に出た武蔵弘幸氏。青山の店をたたみ、201810月、東京・大手町のアマン東京に「武蔵byアマン」の開店に親方として迎えられたのだ。

「最初に打診があった時、ちょうどよいタイミングだな、と思いました。十数年ごとに新しい環境に挑むのが、自分には合っている」と武蔵氏。「あと、長く一人仕事をしてきましたが、チームで働くのもいいだろう、と思いまして」

職人人生の集大成に向かう時期、アマン東京を選んだわけを聞くと「やはり、“それぞれの土地の文化、伝統を尊重する”というアマンの姿勢に共感したのが大きいですね。東京を代表する食の伝統といえば鮨、とりわけ私が追求している江戸前鮨に対する敬意と熱意を感じたのが、決め手でした」という。

 

武蔵氏が鮨の道に入り、キャリアの前半を積んだのは故郷山梨。父親は築地からネタを仕入れ、銀座の高級店にも劣らない上物を使う気骨のある職人だった。また、ネタはショーケースではなく木箱に収めるなど、随所に美意識を反映。父のもとで江戸前の鮨を学び、店を継いでからも探究心を緩めず、地方の一流店として名を成すに至った。しかし、その立場に満足することなく、東京の一等地で勝負することを決意したのが37歳の時。数店の名店を経て、青山に「鮨武蔵」をオープンした。

信があるからこそ、自分のスタイルを通す武蔵氏。握る鮨は、山梨の時と何も変えなかった。ネタには一切の妥協を許さないのも、武蔵氏の信念。自ら毎朝市場に足を運んで上質な魚を買うほか、獲れたての魚を日本各地より空輸で取り寄せる。また、「江戸前鮨は仕込みで決まる」と話す。食材にいかに適切な技術を加えるか、に心血を注ぐ。

 

たゆまぬ研鑽(けんさん)を自らに課してきた職人のみが達する境地に、武蔵氏はある。凛とした新しい舞台を得て、さらなる高みを、どのように開くのか。武蔵氏の鮨、そして職人魂に惚(ほ)れ込んだ多くの人が、期待を込めて注目する。

信頼する人の手による酒と器

「オープンにあたって、宮城県の新澤(にいざわ)醸造店に、特別に当店オリジナルの日本酒「武蔵byアマン」を造ってもらいました。蔵元杜氏(とうじ)、新澤巖夫(いわお)さんは私が深く信頼する人。

 

もともと新澤醸造店は、食事の邪魔をしない、それでいてきちっと旨い日本酒を造るのを得意としています。『武蔵byアマン』もその方向を突き詰めたお酒。精米歩合7%まで磨き上げ、雑味のないすっきりとクリアな食中酒に仕上げてもらいました。うちの鮨との相性もとてもよいです。

 

このお酒にふさわしい酒器を、と、こちらも特別に依頼したのが、江戸切子職人の堀口徹さん。定番の青に加え、赤、緑、黄色、紫とカラフルで形も模様もさまざまな猪口(ちょこ)を20客作ってもらいました。側面に模様が刻まれた片口も、堀口さんの作。猪口と合わせて使っています。

そのほか、陶芸家のタナカシゲオさんには皿を依頼。心通じる人の手による器に囲まれて、いい気分で仕事をしています(笑)。

カウンターには、思いが詰まっています

「鮨屋におけるカウンターは、特別な存在です。その店の心意気、美意識、仕事の清潔感が全部表れます。青山の店をオープンする時は、自ら檜のカウンターを買い付けに行きました。それを3カ月間費やして、建築家の友人と図面を起こして完成させた、ひときわ強い思いを込めて作ったものです。木目の美しさ、凛としたたたずまいが気に入りましたね。12年使ってもまったく輝きは損なわれず、いい具合に深みが増しました。丁寧に手入れしていましたし、うまく育ってくれました。

 

今回アマン東京での開店にあたり、本当はカウンターをそのまま移したかったんです。でも、青山ではL字形、こちらはまっすぐ。考えた末、L字の一辺のみ持ってきて、残りは新しく作ってつなげることにしました。なので、一枚板ではなく、よく見ると継ぎ目があります。

 

そして、古いほうがほんの少しだけ色が濃く、風格がある。まあ、これはしょうがないんですけど(笑)。すっきりと一枚にするより、長年ともに過ごしてきたカウンターを一部でも、一緒に持ってきたかったんですね。やはり愛着がありますから。鮨屋の親方というのは、それくらいカウンターに強い気持ちを持っているものだと思いますよ。」

 

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