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中華菜 膳楽房

榛澤知弥

CHEF / CHINESE

ディープな味を肩ひじ張らずに

本格的でディープな素材や調味料を使いながらも、生き生きとした風味で食べやすい中華料理が、人気を博している。

榛澤知弥(はんざわ・ともや)


1976年東京都生まれ。大学卒業後、アルバイトをしていた阿佐ヶ谷の老舗居酒屋に就職。その後「龍口酒家 チャイナハウス」に入り、10年間働く。2013年に独立し、「膳楽房」をオープン。

おいしさの裏付けを追求

オーナーシェフの榛澤知弥氏は、東京・幡ヶ谷にある知る人ぞ知る中華の名店「龍口酒家 チャイナハウス」で10年間働いてから独立した。もともと料理が好きで、大学卒業後は、アルバイトをしていた阿佐ヶ谷の名居酒屋にそのまま就職。その後、同店の常連客に教えてもらった「龍口酒家」に興味を持って食べに行き、一気に心奪われたのが、今に至る“ディープでありながら、素直においしい”というスタイルの中国料理との出合いだ。

 

「龍口酒家」は、同店のオーナーシェフである石橋幸氏の探究心がもたらす、他の店とは一線を画する料理で知られる店。そんな石橋氏の料理を、「10年を一つの節目として、しっかりと学ぶと決めました」と話す。こうして身につけたベースに、自分なりのエッセンスを加えたのが、現在の「膳楽房」の料理だ。

 

「日本で出版された、中国料理の古い本を見るのが好きです。陳建民さんを始めとする中国人料理人たちが主導して、戦後の日本で花開いた中国料理に惹かれるのです。この時期の料理が、今の日本における中国料理の礎になっているのですから、もっと深く知りたい」と、榛澤氏。また、オープン間もないころに合流したかつての同僚で、台湾人料理人の張振隆(チョウツェンロン)氏の影響も大きい。彼経由で知った台湾独自のハーブやスパイス、家庭料理の要素も、柔軟に取り入れられている。

 

「“膳”は、食事という意味。その“楽房”つまり“ラボ”でありたい、という思いも店名に込めています」と榛澤氏。大学時代は理系で、応用化学を専攻していた氏は、「研究は嫌いじゃないんです」と笑う。あくまでもシンプルな料理を旨としながら、そのおいしさの裏付けを常に追求している榛澤氏。一見素朴に思える料理にも理論や哲学が貫かれている、その深さが個性となり、多くのお客を惹きつけている。

中国で開催したディープな宴席

榛澤氏が修業したのは、東京・幡ヶ谷の「龍口酒家 チャイナハウス」のみです。師匠は、オーナーシェフの石橋幸氏だ。「龍口酒家」は、マニアックな料理で知られている。たとえば素材では、鹿や猪はもちろん、ハクビシンやカエルなどのやや変わった品も人気。また、現地に倣って作られる自家製の漬物や保存食、中国でも少数民族しか使わないスパイスや調味料が、料理の風味付けに登場する。こうした料理に対する石橋氏の探究心は本当に強く、情熱的。かつ、ただ取り入れるだけではなく、きちんとおいしく仕立てる。

 

数年に一回石橋氏が中国で開く宴席にも参加。石橋氏の知り合いの、中国の特級調理師の中人が段取りしてくれるもので、「楊貴妃の宴席」、「高級食材に頼らない、山東料理の高級宴席」などお題があり、開催場所もさまざま。一日中食べ続ける、満漢全席スタイルだ。

 

特に強烈に心に残っているのが、腹に毒キノコを詰めた山羊の丸焼きが登場した宴席という。「山羊の丸焼き」、「毒キノコ」のインパクトに加え、火が入るとキノコは無毒になり、かつ薬効も得るという仕組みにもびっくり。「中国料理の奥深さを感じました」と話す。

自家製の加工品と調味料

「膳楽房」では、自家製でさまざまな保存食や加工品、調味料を作っている。そのままおつまみにしてもいいし、料理に使ってもいい。手作りならではの豊かな味わい、フレッシュな風味が魅力だ。また、キャベツを乳酸発酵させた漬物も、料理によく活用している。

 

「はっきりとした酸味がアクセントになり、重宝しているアイテムです。豆板醤や甜麺醤も自家製しています。と言っても、ゼロから作るのではなく、豆板醤なら市販の気に入りの銘柄に、唐辛子粉などを練り合わせ、蓮の葉で包んでなじませながら熟成する、という具合。自分の好きな味に調整して使っています」

 

また、「木ムー姜ジャン油ユ 」もお気に入りだという。これはレモングラスのような清涼感を持つ、「山蒼子」という植物の実の風味を油に移したもの。シンプルな仕立てだが、香りがとても印象的な料理を実現してくれる。

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