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ランベリー

岸本直人

CHEF / FRENCH

繊細さとダイナミズムの調和

いち早く日本の食材や技術をフランス料理に取り入れてきた料理人が改めてフランス料理を追求。新たな心持ちで料理に取り組んでいる。

岸本直人(きしもと・なおと)


1966年東京都生まれ。「ラ・ロシェル」などで修業後、渡仏。ロワールやパリで研鑽を重ねて帰国。銀座「オストラル」シェフを経て2006年「ランベリー」を青山にオープン。17年に広尾に移転。

新境地に達したベテラン料理人

巨匠、坂井宏行氏のもとで修業、日本の懐石の手法を取り入れたフランス料理を習得し、フランス現地でも経験を重ねた「ランベリー」の岸本直人氏。新しい表現を目指し、早い段階から「日本で料理するとは」という課題に向き合ってきた。産地に赴き生産者と密にコミュニケーションを重ねる他、日本の食材の繊細さを生かすべく、炭火や包丁技術といった和の技法を本格的に導入。岸本氏がこうした意識で行動を始めたのは、今から19年も前のことだ。そんな岸本氏は、2017年に南青山から広尾に店を移転。その頃から、「フランス料理に、より強く意識が向くようになった」と話す。

 

「日本のすばらしい食材を出発点に料理を考える。日本の四季を皿の上で表現する。今も昔も、この二つは自分の軸にあります。ただ、これをベースにどんな料理を作るか、という点が変わりました」

 

一時期はこの考えのもと、フランス料理の技術を離れてでも、食材をピュアに表現する方向を追求していた。しかし、「フランス料理には、フランス料理のおいしさがある。和食には和食のよさがある。それを知ったからこそ、今はフランス料理の、伝統的で豊かな世界に落ち着きを感じる」という。大きな変化だが、自分としては自然な流れと感じている。「日本にフォーカスした時期があるからこそ、自分の中に“この時期は、この生産者さんのこの食材”という“食材カレンダー”ができた」と話す。それを、フランス料理の厚みのある技術体系で生かしていく。

 

「今は料理が楽しくてしょうがないですね。前が楽しくなかったかというと、そんなこともないのですが(笑)。ただ、コンセプトに合わせようという意識が強かったかもしれません。今は本当に、味第一。どうしたらもっとおいしくなるか、細部まで詰めて試行錯誤する毎日です」

 

新しい境地に達した岸本氏。幅広い経験の上に、独自の豊かな世界を築いてゆく。今までにない、現代ならではの「フレンチのベテラン料理人」の在り方を示してくれるに違いない。

日本料理の加熱、フランス料理の加熱

岸本氏はフランス料理の料理人だが、一時期、日本料理の技術に傾倒したことがある。包丁技、炭火の加熱、引き算の美学。今でこそ炭火を使うフランス料理店は少なくないが、岸本氏が和食の料理人に炭火を学んだ当時は、まだ珍しかったという。炭火は、他の熱源にはない高温で食材を熱し、乾いた香ばしさを作り出すことが可能。その力強くシンプルな加熱は魅力的で、店で提供する多くの料理に取り入れてきた。ただ最近は、改めて「フランス料理には、フランス料理のおいしさを表現するのに最適な加熱方法がある」ということを実感しているそう。

 

「今も炭火は使いますが、やはり肉や魚をフライパンでアロゼ(フライパンに素材とバターを入れて加熱し、溶けて泡立つバターをスプーンですくって繰り返し食材にかける技法)しながら加熱すると、バターの水分と香りを吸いながら食材がふくよかに仕上がる。あるいは、300℃のごく高温に熱したオーブンで食材を四方八方から一気に熱し、その後休ませたり熱したりしながら仕上げると、香りがぐっと引き立つ。こうしたことが、フランス料理特有のおいしさになるのかな、と思っています」

最近よく飲むのは日本酒

「日本の食材」は岸本氏が長く取り組んできたテーマ。国産の食材に真正面から取り組むようになったのは、岸本氏が初めてシェフになった2001年の頃だ。それまではフランス産の食材を使うことが誇りで、国産の食材を強く意識することはなかったというが、ヨーロッパでBSEが発生し、フランスからの仔羊や仔牛の輸入がストップ。まず築地に行き、国産の食材に目を向け始めた。そんな事情から、地方に赴いて生産者のもとを訪ねるようになり、次第に国産食材に引き込まれていった。

 

「それだけ地方に多く赴きながらも、なぜか日本酒に興味を示すことなく過ごしてきたのですが、ここのところ、プライベートの時間で楽しむお酒には、断然日本酒を選ぶようになりました(笑)」

 

飲んで衝撃を受けたのは、有名な銘柄ではありますが、「十四代」。「磯自慢」「黒龍」、そして「〆張鶴」も好きという。まだまだ自分の好みを開拓中で、いろいろな日本酒を飲んで楽しんでいるところ。

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