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銀座 小十

奥田 透

CHEF / JAPANESE

自然の食材が宿す“本物”と“理にかなう技術”を求めて

銀座に店を構えて約17年。変わらず第一線で活躍し続ける奥田透の料理は、静かな迫力に満ち、まさに日本料理の特徴を浮き彫りにしたたたずまい

奥田 透(おくだ・とおる)


1969年静岡県生まれ。地元の割烹旅館を経て、京都、徳島で修業。1999年に静岡に「春夏秋冬花見小路」を独立開業。2003年に「銀座小十」をオープン。2012年に現在の場所に移転。2013年にパリ、2017年にニューヨークに店を構える。ミシュラン三ツ星を獲得、海外に支店を持つ日本屈指の名店のひとつ。

食材に寄り添う日本料理

地元静岡での独立開業を経て、奥田透氏が銀座に店を構えたのが2003年。2012年には細部まで和の粋を尽くした空間の現在の店に移転。2013年にはパリに、2017年にはニューヨークにも店を開くなど、奥田氏自身が「本物」と納得できる日本料理を世界に伝えることにも力を注ぐ。

 

そんな奥田氏がひときわ情熱を傾けているのが、最上の食材を手に入れること。料理人、特に日本料理の料理人で食材にこだわりを見せない人はいないだろうが、奥田氏の「最上の食材を引きつける力」は尋常ではない。

今回煮物椀に用いたクエは、36㎏もの大きさ。「10㎏でも十分にいい。でも20㎏を超えたら別世界。30㎏以上となると化け物(笑)。迫力が全然違います」と話す。

ウナギも、15㎏を超す天然の大ウナギ。10万尾に12尾しかいない希少な食材だ。

技術に対する奥田氏の冴えや集中力もまた際立っている。切る技術、炭火で焼く技術、出汁をとる技術といった日本料理を特徴づけている技術には、とりわけ緻密(ちみつ)な試行錯誤を重ね、納得できる解を導き出す。それでいて、進化の探究を緩めることがない。

 

「でもこの2年ほど前から、技術で全部征服してしまったら、天然の最上の食材だけが持つ大事な部分が損なわれるのでは、と考えるようになりました。天然の食材は、“人が食べる用”にできていません。特に今回のクエやウナギといった超級の食材は、命の危機を何度もくぐり抜けながら大きく、強く育ってきたはず。それを、ただ食べやすく作り変えるというのは、どうかと思うのです」

では人間はどう処理すべきか。

 

「ある程度の技術があれば、どんな迫力ある食材も、思い通りに組み伏せることができるでしょう。でも、それは料理の目的ではないはず」

日本料理は食材に寄り添うことを重視し、例えばフランス料理のように、人の意思を優先するものではない。それでも、いっそう、「攻めすぎない」ことを心がける。

 

「その加減が決まった料理が、本物の、最上の日本料理なのだと思います」

包丁は「次なる一本」をいつも探していたい

「包丁は好きで、ついつい買ってしまいます。今日並べたのが、今『一軍』として使っているもの。ふぐ引きが2本、柳刃が11本。加えて直し中の柳刃が2本あります。

 

包丁に特にのめり込むようになったのは、修業中に『尺二』(一尺二寸、36㎝の柳刃)の世界を知ったのがきっかけ。扱うのが難しい包丁ですが、『切る』というのは究極の技術。尺二を自在に操り、切って食材の味を変えてこそ、本物の料理人であるということを教えてもらったと思っています。

 

いい包丁を見ると、自分の技量より包丁の品格の方が上か下か、わかるものです。なので私は『今年の自分はこれで行こう』と、新年にその年に使う包丁を2本選びます。包丁は『次なる一本』を常に探していたい。それが自分の技量、精神の成長につながると思っています」

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